われわれは、入射光の波長と入射角を同時に記憶するという新しい光メモリー効果を見出し、本研究でそのメカニズムを解明するとともに、その諸特性を明らかにしてきた。また、情報記録密度を見積もり、それが現在のコンパクトディスクの数万倍にもなることを示した。さらに媒質の光に対する散乱性を高めることにより、光の弱局在が起こっていることを示す証拠も得た。本年度は、この効果の偏光依存性を調べた結果、試料内では光は多重散乱によって無偏光状態になっているにもかかわらず、書き込み光と直交する直線偏光ではホールの深さはゼロになり、偏光方向が記憶されていることが分かった。右まわり円偏光で書き込むと、左まわり円偏光ではホールは見られない。したがって単色光の周波数、波面、偏光状態がすべて記憶されていることになり、これはきわめて興味深い現象である。また、この効果を利用し記録された情報を非破壊的に読み出す方法を開発する目的で、Sm^<2+>イオンを添加したBaCIF結晶について光誘起蛍光強度変化について研究した。その結果、He-Cdレーザーの325mmの光を照射すると時間とともSm^<2+>イオンの蛍光強度が弱くなり、Arレーザーの488nmの光を当てると蛍光強度が回復すること、その変化の時間依存性が時間の対数に比例すること、その係数が当てるレーザー光の強度に依存して変化することなどが知られた。これらの結果は、この物質が新しい光メモリー効果を示す条件を満たしているばかりでなく、この物質を使うと、読み出し時に記録された情報を乱すことが少なく、また何度も情報を記録したり、消したり、書き換えたりできることを示している。以上のように、本研究により、新しく見出した光メモリー効果のメカニズムや特徴、さらには学問的ならびに実用的な応用の可能性について詳しく示すことができた。
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