本研究では、ナノメートルサイズの半導体粒子のイオン打ち込み法による作製と、その試料の光学特性を評価できるレーザー分光システムの開発を行った。SiおよびGeイオンをSiO_2基盤に打ち込み、水素雰囲気中で熱アニーリングすることにより可視発光する単元素半導体ナノクリスタルを作成した。イオン打ち込み量とアニーリング温度を変化させることにサイズの異なるナノクリスタルを作製した。特に、複数の加速エネルギーを併用する多重エネルギーイオン打ち込み法と非常に低いエネルギーのイオンを注入することにより、微粒子サイズの均一化と空間配列化が可能であることを明らかにした。さらに、Ga、As、Cd、Sなどの異なるイオンを連続的にSiO_2やAl_2O_3基板に打ち込むことによりGaASやCdSなどの化合物半導体ナノクリスタルの作成に成功した。これらの作製した試料の光学的特性(主に発光スペクトル測定)評価のための必要なレーザー分光システムの開発を行った。これは、可視波長から赤外波長領域に至る幅広い範囲の測定を可能にする発光測定用フーリエ変換赤外分光光度計を基本にした分光システムである。この装置を用いて、イオン打ち込み法で作製したナノクリスタル試料の発光スペクトルを測定した。近赤外波長域での発光スペクトルは試料の欠陥に敏感であり、近赤外発光スペクトルの強度測定は、熱アニーリング条件の最適化さらにはイオン打ち込み用基板の選択などの判断にも有用であることを明らかにした。GaAsやCdSなどの化合物半導体ナノクリスタルのバンドキャップをホールバーニング分光によりはじめて明らかにすることができた。
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