量子ホール効果における量子化ホールプラトーは、いわゆる無損失状態のブレイクダウン、即ち対角抵抗の急激な増加が観測されるような電流の増加に対しても、精度が低い測定では一定に保たれるように観測される。けれども、われわれが行ったppmレベルの高精度量子化ホール抵抗の測定では、対角抵抗の急激な増加が現れる電流よりも小さい電流で量子化ホール抵抗は電流増加に対して急峻な変化を示す。われわれは、この現象を量子化ホール抵抗の電流による崩壊と呼ぶ。本研究は量子化ホール抵抗の電流による崩壊現象を実験的に明らかにすることを目的として計画された。本年度の研究実績を以下に示す。 1.量子化ホール抵抗崩壊電流のランダウ準位充填率依存性:GaAs/AlGaAs2次元電子系の量子化ホール抵抗の崩壊臨界電流Icと対角抵抗のブレイクダウン臨界電流Ibを、温度0.3Kでランダウ準位充填率ν=4の近傍(磁場:約6T)で測定した。(Ib-Ic)はν=4で最大で、充填率の変化に対して減少し、ν>4.12とν<3.88で符合が反転する。符号が反転するとき、ホール抵抗と対角抵抗の電流依存性はなだらかになる。 2.温度依存性:量子化ホール抵抗崩壊臨界電流の温度依存性は小さく、活性化型ではない。
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