GaAs/AlGaAs界面2次元電子系バタフライ型ホールバー試料に流す電流密度の増加に伴う量子化ホール抵抗の崩壊および量子ホール効果における無散逸状態のブレイクダウン(破綻)について、現象のランダウ凖位充填率依存性、および量子化ホール抵抗崩壊における臨界電流の温度依存性を測定した。 1.充填率依存性:磁場5.7T、温度0.35Kで、ランダウ準位充填率4の近傍で量子化ホール抵抗崩壊電流I_α(collapse)ならびに量子ホール効果ブレイクダウン電流I_α(breakdown)の磁場依存性を測定した結果、二つの臨界電流の差I_α(breakdown)-I_α(collapse)は充填率が4からズレるに従って滅少し、充填率が3.85以下ならびに4.15以上では両者の臨界的振るまいは消失した。 2.崩壊臨界電流の温度依存性:量子化ホール抵抗がホール電場の変化に対して鋭く崩壊する現象は、量子ホール効果状態が単純なアンダーソン局在状態ではないことを示す。崩壊する臨界電流値の温度依存性を測定することにより、量子ホール効果相が非量子ホール効果相に転移する相境界の温度依存性は超伝導転移と似ていることが判明した。 ランダウ準位充填率依存性の測定過程で、量子化ホール抵抗の崩壊の符号は充填率4と3.9の間では単純な予想に反して負となることが判り、研究課題となった。この現象は試料に依存することが判明し、2次元電子系に並列に導入された高抵抗の効果であることを明らかにしつつある。相境界ホール電場の温度依存性については、量子ホール効果相が消失する温度までの測定を行った結果について検討しつつある。量子化ホール抵抗崩壊のプローブ幅依存性は、今後の課題である。
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