シリコン単結晶の再構成構造表面の表面近傍に生じる静電場を、特にSi(111)-7×7を対象にして、表面の対称性および静電場に敏感なレーザー表面第二高調波発生法(表面SHG法)とキャリヤーのレーザー光励起による電場変調を組み合わせて、評価する手法を確立することを目的として研究を行った。特に今年度は、前年度の予備実験結果である青色レーザー光(ポンプ光)によるシリコンのキャリヤー励起に伴うプローブ光(赤外光、1200nm)の表面SHG信号の増加、をより定量的に評価するために、時間遅延やポンプ光およびプローブ光の波長を独立に変えうる実検系を構成した。その結果、変調電場をより定量的に評価することが可能となった。 YAGレーザー3倍波、4倍波発生用結晶を用いた光学系を整備し、遅延制御システムにより2台のレーザーを同期させて、紫外光によるポンプおよびSHG法によるプローブ実験を行った結果、いずれのポンプ波長についてもポンプ光強度に依存するSHG変化が観測された。シリコンのバンド間遷移の光子エネルギーが3.4eVなので、この変化は純粋にキャリアーのレーザー励起による表面電場の信号ばかりではなく、温度変化なども含んでいる。これらを明らかにするために、異なるドープのサンプルについての測定も進めている。また、YAGレーザーの基本波(1064nm)のポンプ光に対して、微弱ながら赤色のルミネッセンスが観測された。これは、これまでに報告例が無く2光子吸収に伴う発光を観測しているものと考えられる。半導体再構成表面の基礎特性との関連が興味深いので、平行して詳細な測定を進めている。簡単なモデルについて、変調電場の解析を試みた。
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