研究概要 |
本研究は、我々が独自の着想で開発してきた、基底状態でスピン偏極したCs原子線を用いた表面散乱法(スピン偏極原子線散乱法と呼ぶ)により、スピン選択的な共鳴電荷交換を通して、表面第一原子層および吸着原子のスピン相関を解明することを目的とする。そのために全研究期間には、代表的な金属(Ni,Cr)、誘導体(NiO、Cr_2O_3)、半導体(GaAs)、金属表面吸着単酸素分子(NO,CO)を標的に、スピン偏極セシウム原子線の系統的な散乱実験を行い、散乱素過程における共鳴電荷交換のスピン依存性・エネルギー依存性を明らかにする。 今年度は下記の3課題について集中的な開発研究を行なった。 1.散乱原子の荷電状態検出系の開発:散乱後の原子の正負イオン化効率を0.1-10keVのエネルギー範囲に亘って同時計測するため、位置敏感型MCP装置を既存の散乱粒子電荷分析装置に組み込み、検出効率のエネルギー依存性を測定した。少なくとも0.3keV以上のエネルギーでは、中性Cs原子も観測可能な検出効率を持つことが、はじめて確認できた。0.3keV以下のエネルギーについても、引き続き測定中である。 2.散乱原子のスピン状態検出系の開発:散乱中性原子のスピン終状態を測定するため、Inbeamの光イオン化分光の基礎研究を行なった。迷光遮断の工夫によりノイズレベルを1-2カウント/秒まで下げることに成功、低係数率のスピンカウント技術を確立した。
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