研究概要 |
六方晶構造をもつ希釈系Ce化合物Ce_xLa_<1-x>Pd_2Al_3に注目し、Ce濃度の低い領域(x0.15)で見られる非フェルミ液体的振る舞いについて研究を行い、この現象がシングルサイトの効果である2チャンネル近藤効果では無い事を明らかにしてきた。本年度は、0.2x1.0の多結晶試料を作製し、Ceの低濃度領域だけでなく広い濃度範囲、特に反強磁性転移温度T_Nが0となる磁気不安定点近傍での振る舞いを0.4Kの極低温から調べた。その結果、1)CePd_2Al_3(x=1.0)はT_N=3.OKの反強磁性高濃度近藤物質であるが、CeをLaで置換することにより反強磁性転移は低温側へ抑えられていき、x=0.75において少なくとも0.4K以上では消失した。T_Nの濃度依存性より、この系での磁気不安定点はおよそx=0.7であることが判った。2)反強磁性転移が消失したx0.7の試料では7K以下で、Ce1モルあたりの磁気比熱を温度で割ったCm/Tが-lnTに比例して増大するという非フェルミ液体的挙動が見られた。3)この非フェルミ液体的挙動は0.3x0.7の試料で温度依存性がほぼ一致し、広い濃度範囲で濃度依存しないことが判った。以上の事が明らかとなった。 広いCe濃度範囲で濃度依存性がほとんど無いという今回の結果は、これまで非フェルミ液体状態に対して適用されてきた、SCR理論,2チャンネル近藤理論などどんな理論によっても説明する事はできない。また、このような特異な振る舞いを示す物質はこれまでに報告が無く、新しいタイプの非フェルミ液体状態を観測したと考えている。
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