研究概要 |
1.YbInCu_4の価数転移に伴う比熱異常の圧力依存性 YbInCu_4は,C15b型立方晶構造を持ち,常圧下では温度T_v〜40Kにおいて1次の価数転移を起こす。LIII吸収や光電子分光実験等どちらかというと表面状態に敏感な測定法から,価数転移に伴う価数の変化はほぼ0.3程度であると報告されている。一方,Reinertらが行った結晶のバルクの性質を見る体積弾性率の測定結果からは,転移に伴う4f殻のホール占有率の変化量Δn_fが0.9程度あるという報告がある。本研究は,転移に伴うエントロピーの圧力(P)依存性を測定し,Δn_fの情報をバルクな性質を見る比熱測定から得ることを目的に行った。その結果,転移温度は-16.2K/GPaで昇圧とともに減少することを見出した。転移エントロピーも昇圧とともにわずかながら減少する傾向がある。Ramirez&Falicovの方法で解析したところ,Δn_fは,体積弾性率の結果に近い0.6程度の大きな値をなり,昇圧とともに増大する傾向がある。解析から同時に得られるf電子のエネルギー順位,局在f電子とワーニエ軌道の相互作用定数,伝導帯のバンド幅は,昇圧とともに単調減少した。 2.極低温高圧中電気抵抗測定装置の開発 2GPa付近でYbInCu_4のT_vは消失する。この量子臨界点付近で超伝導の発現を期待して,希釈冷凍機とクランプ式高圧電気抵抗測定用試料セルを組み合わせた,極低温高圧中電気抵抗測定装置を開発した。本装置では,現在150mK,1.9GPaまでの測定が可能であるが,今のところ超伝導の発現は観測されていない。今後,セル材質を変え限界圧力を増大し,再度超伝導の可能性について検討する。 3.昨年度から継続して行っている研究の実績 UCu2Snでは,4極子秩序の秩序変数の情報を得ることと相図を作成する目的で磁場中弾性率の測定を行った。この結果,秩序変数は0_2^2である可能性が高いことが分かった。相図については,磁場をc軸に平行に印可すると転移温度TQは,磁場増大とともに減少し,a軸と45度の方向に磁場を印可した場合は増大することを見出した。
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