研究概要 |
1.UCu_2Snの強的4極子秩序温度における磁場依存性 これまで,我々はUCu_2Snが強的4極子秩序することを初めて見出し,その秩序の起源が5f電子基底状態非磁性2重項Γ_5に有ることを明らかにしている。本年度の研究においては,秩序温度の磁場依存性を様々な磁場方向から測定し,温度・磁場平面における4極子秩序相図を完成した。完成した相図を説明するため,4極子・歪み相互作用,4極子間相互作用およびゼーマン相互作用を考慮して詳細な解析を行った結果,これまで測定した,弾性率,比熱,磁化率および相図のすべてを説明する結晶場モデルを得ることに成功した(このモデルについては現在投稿準備中)。 2.UNiAlにおける磁場誘起不可逆過程 14Tまでの強磁場下において,UNiAlの磁化,磁気抵抗,ホール抵抗,磁歪および弾性率を測定した。7Kにおいて磁場を上昇していくと,11.35Tにおいて反強磁性秩序相から強磁性相へ1次のメタ磁性相転移することを見出した。特に注目される結果は,最初の励磁過程と以後の励磁過程において明らかな差が生じることである。このメモリー効果の原因は,中性子回折の実験から,六方晶c面内の磁気構造プロパゲーションベクトルのメタ磁性転移における不可逆的変化と直接関係することが分かった。 3.エキゾチック超伝導体Sr_2RuO_4における超伝導転移温度の歪み依存性 本研究では,高純度単結晶を用いることにより,初めてこの物質の超伝導転移温度における縦波弾性率に飛びを観測した。エーレンフェストの関係から超伝導転移温度の異方的歪み依存性を見積もった。この結果などから本物質における超伝導性の圧力依存性は,高温超伝導体とは異なり,異方的圧力によって誘起されるキャリアのバンド間遷移に起源を発することを明らかにした。また,横波弾性率に関する研究においては,驚くべき事に超伝導転移温度において横波弾性率が飛びを示す兆候を見出した。これは,時間反転非対称2次元秩序変数の存在を直接示唆する。
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