本研究開発を進めるために、本年度は以下の事柄を実行した。 1.電界放射部の設計・製作と動作テスト 走査トンネル顕微鏡の原理を用いた電界放射部の設計・製作を行った。電界放射モードで使用することを目的としているので、試料表面垂直方向の移動可能範囲を大きくするため、インチワームを使用した。また、2次電子をモット検出器に引き込みやすいようにオープンな構造にした。 走査トンネル顕微鏡部の動作確認は大気中、HOPG試料を用いて行った。探針制御には本年度購入した制御装置(TOP System3)を用いた。制御装置の購入に当たっては、(1)電界放射モードでの制御が可能なこと、(2)微少電流で動作すること、(3)インチワームの制御が可能なこと、(4)モット検出器の信号を取り込めること、等に留意した。探針作成には、本研究のために製作した電界研磨装置を用いた。その結果、原子分解能は得られていないが、表面の形状を確認することができた。本研究の遂行には十分な性能が得られた。 2.引き込み電極およびスクリーン部の設計・製作 モット検出器に引き込む前に、2次電子の検出試験を行うための引き込み電極及びスクリーンの設計・製作を行った。効率よく回折電子を引き込むことができるように、電子の軌道計算を基に、円筒型の引き込みおよび収束電極と阻止電場型のグリッド電極を合わせ持った電極を設計・製作した。 3.超高真空装置への組立 電界放射部とスクリーン部を超高真空装置に取り付け、原理実験を開始している。安定して2次電子を取り込めるようになったら、モット検出器への2次電子の引き込みにチャレンジする。
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