研究概要 |
本研究ではGe:Gaを用いた金属-絶縁体転移に関する物理を解明した。従来から行われている絶対零度への電気伝導度の外挿に疑問をいだき、有限温度スケーリング法を適用した結果、転移点1%以内では臨界指数-μ1.2であることを新たに発見した。また、有限温度スケーリングでは、絶縁体試料が臨界指数0.5の理論曲線に全くのらないことがわかった。すなわち、これまでスケール可能だと思われていた広領域が、実はスケーリング理論と矛盾していることをつきとめた。さらに広域ホッピング伝導、誘電率、局在長に関する様々な臨界指数を絶縁体試料を用いて決定、転移点近傍1%を境にμが0.5から1.2に変化するように、広域ホッピング伝導、誘電率、局在長に関するすべての臨界指数が転移点近傍1%を境に変化することがわかった。そこで、補償がないとされる我々のGe:Ga試料の臨界点1%以内で得られた様々な臨界指数を、強く補償されたGe:Ga,Asの様々な臨界指数と比較した結果、驚くことにすべての指数が完全なる一致を示した。この事実から、補償がないとされる不純物半導体の臨界点近傍で異なる臨界指数が得られる理由を、我々はわずかながら試料中に存在する補償の影響だと考えた。p型半導体にはわずかではあるが必ずドナー不純物が存在する。よって、臨界点近傍においてμ>1の領域が補償がないとされる不純物半導体で見出された場合、それは補償がない系の本質的な臨界指数ではなく、補償がある系特有の臨界領域であろう。この補償がある系特有の臨界領域は、補償比の大きさによって変化する。すなわち、ドナー濃度とアクセプタ濃度の比によって、臨界領域の広さが変化することを突き止めた。
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