(DMe-DCNQI)_2Cuの特異な金属-絶縁体転移と分子内振動

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11440118
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東邦大学
• 研究代表者: 西尾 豊 東邦大学, 理学部, 助教授 (20172629)
• 研究分担者: 梶田 晃示 東邦大学, 理学部, 教授 (50011739) ; 田村 雅史 東邦大学, 理学部, 講師 (00231423)
• キーワード: 有機伝導体 / 比熱 / 金属-絶縁体転移 / 分子内振動 / 重水素化 / メチル基 / 秩序-無秩序転移

研究概要

DMe-DCNQI-Cu系ではDCNQI分子内の堅固な構造の外側にメチル基が歯車のように回っており、このメチル基の大きさがC軸の積層方向の距離を決定している。メチル基の水素を重水素化することでC軸の距離が縮み、1次元性が強まるため、C軸方向の3倍周期のCDW転移に大きな影響を与える。我々は本研究において2つの重水素を置換されたDMe-DCNQI分子内の振動の自由度がリエントラントなこの転移にどのような関わっているのか明らかにし、分子内振動が関与した初めてのリエントラント金属-絶縁体転移の可能性を探る。
今年度はまず1-100Kの広い範囲にわたって、高精度の比熱を可能とするため測定系の整備を行った。主な改良点は1)小型軽量化した新しい温度センサーの開発 2)温度コントローラNeocera社製LTC-21をもちいた熱浴の温度安定性の向上 3)ノイズ対策 の3点を行った結果1.5-20Kまでの温度範囲で測定精度が3倍程度向上し、相対精度で0.1%までの測定が可能となった。この結果重水素化によるSchottkyおよび異常比熱の測定結果も格段に向上し、重水素化によって出現する金属-絶縁体転移に伴う比熱の段差の構造が明らかとなった。
この整備された測定系を用いて2つの水素を重水素化したCHD_2を持つ結晶で発見した異常比熱の原因を調べるため、1つの重水素を含んだCH_2Dと2つ含んだCHD_2をもつDMe-DCNQI分子を重水素化を系統的に進めながら作成し、その混晶試料で比熱の測定を行った。この結果CHD_2を75%含んだ試料から突然異常比熱が出現することが明らかとなった。これらの実験事実より、CHD_2が積層方向に積み重なってこれら同士が相互作用によって秩序-無秩序転移を起こしている可能性が高いものと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Y.Nishio: "Specific heat and metal-insulator transition of (BEDT-TTF)2MZn(SCN)4 (M=Cs,Rb)"Synthetic Metals. 103(1-3). 1907-1908 (1999)
• [文献書誌] T.Ichikawa: "Vortex motion in an organic superconductor-(BEDT-TTF)2Cu(SCN)2,"Synthetic Metals. 103(1-3). 1822-1823 (1999)
• [文献書誌] N.Tajima: "Anomalous magnetotransport of a highly mobile electron system in α-(BEDT-TTF)2I3"Synthetic Metals. 103(1-3). 1960-1960 (1999)
• [文献書誌] Y.Oshima: "Cyclotron resonance study of α-(BEDT-TTF)2I3"Synthetic Metals. 103(1-3). 1919-1920 (1999)
• [文献書誌] N.Tajima: "Finding of a new organic semiconductor with an extremely narrow gap"Synthetic Metals. 103(1-3). 1958-1959 (1999)
• [文献書誌] N.Tajima: "Transport Property of a Organic Conductor α-(BEDT-TTF)_2I_3 under High Pressure"J.Phys.Soc.Jpn.. 69・2. 543-551 (2000)
• [文献書誌] Y.Nishio: "Thermodynamical Study of (Dme-DCNQI)_2Cu system -Mechanism of Reentrant Metal-Insulator Transition-"J.Phys.Soc.Jpn.. 69・5. in press (2000)