研究概要 |
色素溶液などの凝縮系で振動波束をコヒーレント制御するために、フェムト秒パルスの各スペクトル成分の初期位相を独立に変えることのできる位相制御システムを完成させた。 パルス発振器で生成したフーリエ変換限界に近いパルスを位相変調器に入射する.パルスは回折格子でスペクトル成分に分解され,凹面鏡によってフーリエ面で各スペクトル成分は位置成分に変換される.そしてフーリエ面上に置かれた,一次元的に128個並んだ液晶ピクセルを有する液晶空間光変調器(SLM)によって,その各液晶ピクセルは独立に印加電圧に依存して屈折率が変化するので、パルスの各スペクトル成分に独立に位相シフトを与えることができる.位相変調された後,再び回折格子でパルスに再合成される.そしてパルスは位相解析装置に入り,周波数分解光ゲート法(SHG-FROG)を用いて周波数と遅延時間の3Dプロットが得られ,演算処理することによって,パルスの位相曲線を得る.所望のパルス位相と異なる場合は変調信号をSLMに戻し,それを繰り返すことによって所望のパルス位相に近づける. 位相変調していないパルスの位相状態は2次関数的に支配されている.この位相がキャンセルされるような変調信号を与えると,パルス幅は狭まり,その位相差は減少する.これを10倍に拡大すると,位相状態は3次関数的に支配されている.さらに変調信号を与えると,FROG波形の歪みが抑えられ,さらに位相差が減少していることがわかる.このように任意の位相,2次曲線,3次曲線を与えて,位相のずれを8πから0.2πラジアン程度に減少させることができた.したがってパルスは圧縮され,本システムで位相制御が可能であることがわかった.
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