今年度は、前年度に引き続いて希ガス原子のnp→ns遷移(Ne:n=3、Ar:n=4 Kr:n=5)発光断面積の絶対値を、より良い精度で決定することを目指した。従来、報告が一例のみであったKr原子に焦点を絞った。得られた結果は、発光断面積の絶対値は、もとより、入射電子のエネルギー依存性についても、かなり異なる結果が得られた。 また、2_<p9>準位(パッシェン記号)は、ほぼ純粋なLS表記が成り立つ状態であり、^3D_3と表される。ところが2_<p9>→1_<s5>遷移に件う発光断面積の衝突エネルギー(E)依存性は、予想に反して、ほぼ〜E^<-1>であり、スピン交換過程が成り立つ場合に特有な〜E^<-3>とは程遠い依存性を示すことが判明した。高速パルス発信器とデジタルオッシロとの組み合わせで、残光の時間依存性を測定する(平均寿命と占有率の解析を行う)ことにより、この問題を解決をすることが出来た。2_<p9>準位より更に上の準位からカスケード的に遷移してくるプロセスに対する断面積が極めて大きいことを実験的に示した。占有率の比と全発光断面積の値を基に、2_<p9>準位へ直接励起する過程に対する断面積を実験的に決定できた。
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