研究概要 |
1.グローバル・トモグラフィーの手法を用いて全地殻と全マントルの3次元地震波速度構造を推定した結果,南太平洋と東アフリカ下のマントル内に地表から核-マントル境界(CMB)まで続く巨大な低速度異常体が見られ,スーパー・プルームを映していると思われる.また,CMBでの低速度域の分布と地表におけるホットスポットの分布との間によい相関が見られ,多くのホットスポットとプルームの起源はCMBであることを示唆している.ホットスポット下の低速度のプルームの多くはCMBから地表までまっすぐに上がるのではなく,曲がっているように見える.これはプルームの上昇がマントル対流に影響されることを示唆している. 2.世界の沈み込み帯の地震学的構造に関する研究を系統的にレビューし、考察した.地震学では、地震波速度、減衰と異方性という三つの物理学的パラメータを用いて地球の構造を表している.沈み込んでいる海洋プレートは高速度、低減衰となっているのに対して、島弧活火山下のマントルウェッジは低速度、高減衰、また強い異方性を示しており、島弧マグマの存在が考えられる. 3.これまでの地震波トモグラフィー法及びそれの沈み込み帯と地震断層帯への応用についてのレビューと考察を行なった.地震波トモグラフィー法はこれまでの十数年間には著しい進歩があったが,まだ改善する余地がある. 4.カナダ西部のCascadia沈み込み帯の詳細な3次元構造を決定した結果、沈み込んでいるJuan der Fucaスラブ上のマントルウェッジに顕著な低速度異常体が見られ、スラブの脱水によるものと思われる. 5.西南日本下のフィリピン海スラブ内の稍深発地震の分布は幾つかの違うパータンを示す.この地震分布の多様性は、スラブ内の脱水によって解釈される.
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