研究概要 |
2次元非静水圧雲解像モデルを用い,インドシナ半島の降水日変化について調べた。モデルの初期値は,6月気候値の風速・気温・湿度の鉛直分布から作成した。計算の結果,モデルは観測されている日変化の特徴をうまく再現しただけでなく,1)タイ西部と中央部に位置する山地の風下側山麓において対流雲が夕方に励起され,2)それらがスコールラインに組織化されて夜間に東へ移動して行く,という現象の繰り返しで起こっていることがわかった。これらの計算結果に基づき,太陽同期したスコールラインの発生と東への移動がインドシナ半島内陸部の降水日変化の夜の極大をもたらしている,と結論した。また,高分解能の対流活動指数を用いた対流雲活動の日変化の空間分布も解析し,数値実験を支持する結果を得た。この成果をまとめたものを国際研究集会で発表すると共に気象集誌に投稿した。 H10年度に取得されたタイのドップラーレーダーデータには複数のデータ書式が含まれていたので,これをUF(Universal Format)に変換して統一し,取得データの大半をハードディスクに収容した。このデータを用い,本年度は最低仰角のPPIデータを用いたエコー分布の日変化に関する予備的な解析を開始した。その結果,月平均したエコー分布においてもエコーの存在する場所が時間と共に東へ移動している様子を見ることができた。これは,スコールラインの東への移動が日変化の主要な原因であるという数値実験の予測と整合したものである。また,観測領域内のエコー面積の月平均日変化を比較した結果,山脈近くのチェンマイと少し離れたコンケンではチェンマイのエコー面積最大時間が18時前後であるのに対しコンケンでは真夜中になることがわかった。これも,数値実験の予測と整合している。さらに,高時間分解能ゾンデ観測を用いた温位・水蒸気の日変化や広域の水収支の実体も調べ,それぞれ国際研究集会で発表した。
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