スヴァールバルISレーダーを用いた極冠域における電離圏イオン流出過程の研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11440144
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 藤井 良一 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (00132712)
• 研究分担者: 小川 忠彦 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (60271607) ; 野澤 悟徳 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (60212130) ; BUCHERT S. C 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教授 (70293719) ; 前田 佐和子 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (00199613) ; 渡部 重十 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90271577)
• キーワード: イオン流出 / イオン加熱 / 極冠域 / オーロラ帯 / 高緯度電離圏 / スヴァールバル欧州非干渉散乱レーダー / EISCATレーダー / ISスペクトル

研究概要

本課題は、イオンの加熱や流出過程が頻繁に生起しているにも拘わらず、従来十分な観測研究が実施されていない極冠域の電離圏上部において、EISCATレーダーを用いて観測を行い、それらの物理機構を解明することを目的としている。さらに、ロケット、人工衛星、極域全体をカバーする地上観測との共同観測研究を行い、高緯度電離圏における、この現象の果たしている役割を総合的に理解することも重要な目的である。
2000年11月25日から12月4日にわたり宇宙研ロケット実験に呼応して、EISCATによる特別実験、SuperDARN観測および光学観測などによるキャンペーンを実施した。この期間中においては、ESRの2機のレーダーを6.4秒で切り替えて用いた。第1アンテナは主に極方向を観測し、カスプの同定に有益な情報を与えるとともに、高電子密度領域の移動現象(Flux Transfer EventやPoleward Moving Aurora Formと関連づけられる)を観測した。第2アンテナは磁力線方向のイオンの加熱や流出過程を観測した。さらにEISCAT VHFレーダーも同時に用いて、イオンの温度異方性現象の観測も試みた。
2000年11月27日において、昼側カスプ周辺を観測していると考えられる時間帯にイオン流出に伴うイオン温度異方性が観測された。このイオン温度異方性は、電子密度の増大及び、電子温度の等方的上昇を伴っており、夏に同様の方式で行われた実験による結果と一致している。さらに、IS理論では説明できない異常な強度のISスペクトルも同時刻に高い頻度で、発生していた。また、イオン温度異方性と同時刻に約50mV/mの強い電離圏電場が観測された。今後、昼側カスプ周辺で生じるイオン流出に伴うイオン温度異方性と、それに関連する物理量との関係について調べていく。

研究成果

• [文献書誌] Fujii,Ryoichi: "Energy coupling between the magnetosphere ionosphere and thermosphere"Advanges Space Research. 25(1). 213-218 (2000)
• [文献書誌] Ogawa,Yasunobu: "Simultaneous EISCAT Svalbard and VHF radar observations of ion upflows at different aspect angles"Geophysical Rescearch Letters. 27. 81-84 (2000)
• [文献書誌] Endo,Minoru: "Ion outflow and in flow at the topside ionosphere observed by the EISCAT VHF radar"Annales Geophysicae. 18. 170-181 (2000)
• [文献書誌] Yoshida,Naofumi: "Coordinated Akebono and EISCAT observations of suprathermal ion outflows in the nightside inverted-V region"Journal of Atmospheric Solar-Terrestrial Physics. 62. 449-465 (2000)
• [文献書誌] Saito,Susumu: "Effects of kappa distribution electrons on incoherent scaner spectra."Annales Geophysicae. 18. 1216-1223 (2000)
• [文献書誌] Oyama,Shinichiro: "Effects of atmospheric oscillations on the field-aligned ion motions in the polar F-region"Annales Geophysicae. 18. 1154-1163 (2000)
• [文献書誌] Ogawa,Yasunobu: "Frequency dependent power fluctuations : a feature of the ESR system or physical?"Annales Geophysicae. 18. 1224-1230 (2000)
• [文献書誌] Ogawa,Tadahiko: "Plasma density supression process around the cusp revealed by simultaneous CUTLASS and EISCAT Svalbard radar observations"Journal Geophysical Research. (In press). (2000)
• [文献書誌] Saito,Susumu: "Observation of isotropic electron temperature in the turbulent E region"Annales Geophysicae. 19. 11-15 (2001)