研究概要 |
本年度の関東山地,足尾山地及び東南アジアタイ国における微古生物・岩相層序学的な検討により,以下のことが明らかになった. 1.最上部ペルム系放散虫動物群は従来言われていたNeoalbaillella ornithoformis帯ではなくN.optima帯を代表する放散虫動物群によって特徴づけられる. 2.Neoalbaillella optima帯を代表する放散虫はP/T境界直下の暗緑色珪質粘土岩の下位に位置する暗灰色チャート層より産する. 3.Neoalbaillella optima帯を含むチャート層の岩相は日本,タイ国で類似した様相を呈するが,その層厚については地域差が存在する。特に,古テーチス海で堆積したタイ国における含N.optima帯チャート層は2〜3mから10m前後に達するものまで認められる。これは古テーチス海の閉塞に伴う急激な岩相変化を示していると思われる. 4.下部三畳系放散虫動物群について,従来,上部Smithian〜Spathianを示すParentactinia nakatsugawaensis帯により代表されるとされてきたが,本化石帯の上部はさらに3〜4帯に細分される可能性がある. 5.P/T境界当時の深海域を中心とした古海洋について,古太平洋では広域的な貧酸素状態が卓越したが,古テーチス海域では地域的な海盆での局所的な貧酸素状態が起ったと思われる。これはP/T境界層を挟む(特にP/T境界層の上位に位置する)岩相に地域ごとに大きな岩相変化が認められるからである. なお,P/T境界層周辺の堆積・微古生物学的検討は順調に進んでいるが,繁雑かつ繊細な作業の必要な,地球化学的検討については現在続行中である。また,研究発表については国際誌,学会誌および本学紀要に投稿済みですべて受理の内諾を得ている.
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