研究概要 |
本年度の本研究課題に基づく研究を関東山地、足尾山地および東南アジアのタイ国で実施し、以下のような成果が得られた。 1関東山地五日市海沢層のチャート相において下部三畳系放散虫層序の検討を行い、Spathianの保存良好な放散虫化石を得ることができた。しかしながら、付加体地域の剥ぎ取り作用により、構造的下位に新しい放散虫群集がまた上位に古い群集が存在することが明らかになった。また、Spathianの動物群には最下位にParentactinia nakatsugawaensis群集があり、その上位に3ないし4の放散虫化石群が識別できる可能性がある。ただし、コノドント等の時代を指示する化石がきわめて少ないことからさらに検討する必要がある。 2同上地域のチャートの地球化学的検討を行った。その解析は現在行っているが、年代が新しいくなるほどEu,Ce,Ba,Mn等の元素に富み、また、SiO2,TiO2,Al2O3の濃度が高くなる傾向が認められた。P/T境界に近付くほど陸原性砕屑粒子の供給が減ることを示唆しているものと思われる。 3足尾山地南東部および北部でペルム紀・三畳紀の地層を含む地質体の検討を行った。足尾山地主要部(栃木・群馬県)で設定された構造層序がほぼそのまま連続することが明らかになった。残念ながら、P/T境界層そのものの確認はできなかった。 4タイ国北部のロエイ北方地域に分布するチャート層中に下部三畳系を確認した。詳細な検討は現在進めているが、これまでに確認した日本およびタイ国の下部三畳系放散虫とほど同様な動物群であることが考えられる。
|