研究概要 |
世界最大の海洋プレート断片であるオマーンオフィオライトのマントルカンラン岩には,かつてのアセノスフェア流動が凍結されており,その解析は現在の海洋プレートの形成過程を考察するために重要な情報をもたらす. 2年目の本年度は、昨年度の野外調査とその後の室内研究で明らかにした北部ヒルチ岩体を構成するカンラン岩の大構造を基に、個々のカンラン岩の結晶構造についてSEM-EBSDシステム(フランス・モンペリエ大学所有)を利用して解析した. その結果,アセノスフェア流動を示す高温変形の結晶構造は,モホ面から深部に向かってaxial(010)パターンから(010)[100]パターンへと変化することがわかった.また,これらの結晶構造は海洋プレート改変時の低温型の構造発達に強い影響を与えていた可能性があることを見い出した. さらに、クロムスピネルの結晶構造を解析したところ、予想されていたよりも強い結晶構造が存在することがわかった。これは、クロムスピネルの変形が、これまで考えられていたような拡散クリープやメルトを媒体とする溶解-沈殿クリープだけではなく、転位クリープにも支配されていることを示唆している。本年度は、モンペリエ大学(フランス)のMainprice教授と協力して、クロムスピネルの数値実験を行い、転位クリープによる結晶構造を考察した。 本研究は、拡散クリープによって変形したクロムスピネルを利用してマントル流動測定をすることを目的としている。本年度の研究成果としてクロムスピネルの変形メカニズムを明らかにできたことで、来年度以降に本研究目的に適したサンプルを見つける可能性が高まったことを付記しておきたい。
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