研究概要 |
かんらん岩の変形微細組織-特にスピネル粒子の形態-を利用してマントル流動について研究する目的で本研究を行った.スピネル粒子はこれまでの研究から主に拡散クリープによって変形すると考えられていたが,本研究の解析から転位クリープも重要なメカニズムとして働いていることがわかった.そのため古歪速度計として活用する前にスピネルのレオロジーを再検討する必要が生じ,本研究期間内でオマーンオフィオライト・ヒルチ岩体の様々な条件で変形したかんらん岩のスピネルの解析を行った.その結果,スピネルに働く拡散クリープは低温ほど著しいだけでなく,転位クリープもまた低温条件ほど強いことがわかった.これについて低温では流動応力がより増大するためであると考察された.古歪速度計は拡散クリープだけを前提とした理論から成り立っているため,理論から見直す必要があることわかった.これは今後の検討事項である.この研究課題を通じてオマーンオフィオライトのテクトニックな背景を知るためにオリビンの結晶方位異方性を解析した.その結果,海洋プレートマントルリソスフェアの内部構造には強い力学特性が存在するらしいことがわかった.さらに,マントルリソスフェアに発達する延性剪断帯は初期の力学特性の影響を受けながら発達するらしいことがわかった.これらの成果については国際会議や国際誌に発表を予定している.
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