研究分担者 |
棚部 一成 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20108640)
小暮 敏博 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (50282728)
上島 励 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (20241771)
佐々木 猛智 東京大学, 総合研究博物館, 助手 (70313195)
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研究概要 |
本年度は軟体動物殻体形成において重要な機能を果たしていると考えられる殻内タンパク質MSP-1に関する分子遺伝学的研究を行うとともに,MSP-1の軟体動物における分布とMSP-1を持つ殻体の鉱物学的特徴との対応に関する研究を中心に行った.MSP-1の分布に関しては、MSP-1の配列に基づいて合成した人工ペプチドに対する抗体を作成し,免疫化学的手法による実験を行った.MSP-1をコードする相補的DNAをプローブとしてホタテガイの外套膜から抽出したmRNAに対するノザンブロットを行った結果,MSP-1をコードするmRNAはサイズにおいて2.9kbのもの1種類だけが発現していることが明らかになった.また,MSP-1は,ホタテガイの属するイタヤガイ科ならびに,同じくカルサイトの殻体を持つ翼形目の種に分布するのみならず,アラゴナイトの殻体を持つ異歯目の種やさらには古腹足類のアワビにも分布していることが明らかになった.このことはMSP-1が軟体動物において古い起源を持ち、殻体形成において殻体を構成する鉱物種や微細構造によらないより一般的な機能を持っているか,あるいは軟体動物において複数の起源を持ち,未知の共通な機能的要請のため収斂進化した可能性があることを示唆する.来年度は二重鎖RNAを導入することにより特定の遺伝子の発現を阻害するRNAi法を応用することにより,MSP-1の生体における機能の解明を目ざす.また,ディフェレンシャルディスプレイ法によりヨーロッパモノアラガイもしくはサカマギガイ(Physasp.)の外套膜に特異的に発現している遺伝子を同定し,RNAi法により「トランスジェニックスネイル」を作出することによって殻体形成に関与する遺伝子の機能の解析を行う予定である.
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