研究概要 |
本研究は,淡水生巻貝であるモノアラガイ(Lymnaea)を主に用いて,軟体動物における殻の殻体形成機構,特に殼の巻きのメカニズムを明らかにすることを目的とする.本年度は以下の研究を行った.(1)殻タンパク質Aspeinの機能解析:二枚貝類アコヤガイの外套膜より単離したAspein遺伝子の全長cDNAを発現ベクターにサブクローニングし,リコンビナントの作成を行った.現在in vitroの結晶合成実験に供すべく,精製を行っている.(2)RNA干渉法による殻タンパク質AspeinおよびMSP-1の機能解析:in vivoでの殻タンパク質の機能をRNA干渉法により解析するため,AspeinおよびホタテガイMSP-1遺伝子に相補的な二重鎖RNAの合成を行った。殻の成長速度が増大する春から初夏に実験を行うべく,現在アコヤガイおよびホタテガイ幼体個体のいけすにおける養生飼育を行っている.(3)軟体動物におけるHoxクラスター構造の解析:ホタテガイ成体の外套膜において2種類のHox遺伝子(いずれもクラスター中部領域のもの)が発現していることを確認した.また,軟体動物におけるHox遺伝子のクラスター構造の変異・進化を明らかにするため,単板類を除くすべての現生の綱について,PCR法によるHox遺伝子のクラスター構造の解析を行った.その結果,クラスター中部領域において綱間でHox遺伝子の数に大きな変異があることを明らかにした.(4)Lymnaea外套膜のcDNAライブラリーの作成:軟体動物の殻体形成に関与する遺伝子の単離を行うために,Lymnaea幼生の各ステージおよび成体外套膜より調製したmRNAをもとにcDNAライブラリーの作成を行った.現在EST解析の準備を行っている。
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