研究概要 |
今年度はレーザー加熱装置の導入に伴い、加熱光学系の立ち上げと、マントル最深部で起こっていると考えられるいくつかの系について、ダイヤモンドアンビルを用いた高温高圧実験を始めた。一部の試料については、筑波にある放射光実験施設で、レーザー加熱及び外熱装置を組み合わせた、X線その場観察実験を行った。その結果、(1)下部マントルの主要構成鉱物である(Mg,Fe)Oについて、従来Mgに富んだ側では転移が見られないとされたが、精密な測定の結果、少なくとも(Mg_<0.6>,Fe_<0.4>)Oの組成までは磁気転移の影響と見られる稜面体構造に転移し、転移圧の組成依存性があることがわかった。一方、100万気圧領域での(Mg,Fe)Oの安定相については、FeO端成分で1次構造転移を起こす条件でも、少なくとも700℃以下では稜面体構造相が安定なことがわかった。(2) SiO_2の下部マントルでの安定相の検証として、約80GPaで粉末試料のレーザー加熱を行った。常温〜約1500℃の条件ではCaCl_2構造相が安定で有り、ルチル構造からCaCl_2相への転移境界は約50GPa付近に存在し、正の勾配を持つ可能性を示した。また、(3)鉄の高圧相のε相と水の直接反応を観察した。これは初期地球の核生成以外に、沈み込むスラブのコア-マントル境界での反応としても重要である。15-35GPaの圧力下で外熱法による600℃程度までの加熱では変化が見られなかったが、レーザー加熱後の試料はFeOの生成が明瞭に観察されており、低圧側から予想される反応温度に比べ、実際にはかなり高温側に移動していることを示した。(4)ガーネットが下部マントル中でアルミを含んだペロブスカイトに転移する時、30GPa(約850km)の深さで鉄の固溶関係を大きく変えている可能性があることを示した。
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