研究課題/領域番号 |
11440158
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 晶 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (10183823)
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研究分担者 |
藤原 顕 文部科学省, 宇宙科学研究所, 教授 (70173482)
永原 裕子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80172550)
柴田 裕実 東京大学, 原子力研究総合センター, 助教授 (30216014)
大橋 英雄 東京水産大学, 水産学部, 教授 (40134647)
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キーワード | 宇宙風化作用 / 反射スペクトル / レゴリス / 小惑星 / 月のソイル / パルスレーザー / 微小鉄粒子 / 宇宙塵の衝突 |
研究概要 |
隕石の中でも最も多く発見されている普通コンドライトとそれに対応すると考えられているS型小惑星のスペクトルは一致しない。これはレゴリスで覆われた小惑星表面が微小隕石衝突による「宇宙風化作用」によって光学的に徐々に変化しているためと考えられている。Hapke(1975)は、反射率の低下やスペクトルの赤化、吸収帯の弱化といった光学的変化は、小惑星の表層部数百μmに形成されている微小鉄粒子を含むリムに起因すると理論的に提唱した。 昨年度までの研究でナノ秒パルスレーザー照射が宇宙風化作用によるスペクトル変化を効果的に再現できることを明らかにした。本年度は、パルスレーザー照射・反射スペクトルの測定を継続するとともに、実験試料の光学的変化の原因を探るため、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いて観察を行った。パルスレーザーを照射した試料から色の変化している粒子をピックアップしてエポキシに埋め込み、ミクロトームを用いて厚さ70nm以下の超膜薄片に切削し、TEM用試料とした。パルスレーザーを照射したカンラン石試料の表層付近では、200nmほどにはアモルファスのリムが形成されていた。これは、粒子表面が蒸発・再凝縮した結果を示している。さらに、このリムの中には数nm〜数十nmのナノ微粒子が多数分布していた。これらの微粒子は単結晶及び多結晶の形を取り、微小領域電子線回折および制限視野回折像からメタル鉄〈体心立方/a=0.2874nm〉であることが確認された。形状・サイズともにKeller&McKay(1993、1997)が月試料中に発見したものと大変よく似ている。この結果は、国内外で高い評価を受けており、Nature誌にすでに受理されている。 また、極端紫外領域の反射スペクトルも測定を行い、宇宙風化作用による反射スペクトル低下が波長30nnの領域にまで及んでいることが明らかになった。
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