地球の沈み込み帯に置けるマントル対流、温度構造、物質循環は、沈み込み帯での火成作用-変成作用のみならず、地球規模での物質-エネルギー循環を考える上で重要である。本研究では、これらの現象に対応する数値モデルを開発し、火成作用-変成作用の再現や観測との対比を通して、沈み込み帯の地質現象の総合的理解を目指した。今年度は、特に変成作用と変成帯形成の力学的場についてモデル化を行った。プレート収束境界における岩石の変形を粘性一定の流体として扱い、(1)平行な2平板にはさまれて押される場合、(2)斜交する2平板がつくる楔形領域に流体がはさまれており、2平板の間の角度が狭まって流体を押し出す、あるいは平板を通して流体が不均質に流れ込むことによって押し出しが起こる場合、(3)斜交する2平板がつくる楔形領域に流体がはさまれており、平板が流体を引きずることによって、コーナー流れを生み出す、あるいは平板を通して流体が均質に流れ込むことによって押し出しが起こる場合、をモデル化した。 いずれの場合も、境界に沿った平板の動きも考慮され、transpression-typeや3次元コーナー流れなど、現実的かつさまざまな状況を再現することができた。 その結果、prolate strainが起こるのは、3次元コーナー流れだけに限られ、他のモードでは、すべてoblate-plane strainが卓越することが分かった。さらに、白亜紀西南日本の変成帯の変形を解析した結果、これらの変成帯は、横ずれ成分が沈み込みの垂直成分と同じかより低い沈み込みに伴う、付加体内部の3次元コーナー流れによって変形-上昇したことが明らかとなった。
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