沈み込み帯の火成作用については、数値モデルから予想される沈み込み帯の温度構造・流帯分布をこれまでの実験的研究を通して地震波速度構造に読みかえる試みがなされ、実際の速度構造との対比がなされた。その結果、日本列島(特に東北日本、中部日本、九州北部)における地震波速度構造とその特徴がモデルにより説明され、沈み込みむプレートから放出される流体の量や位置が、主に沈み込むプレートの年齢(言い替えるなら沈み込む直前の熱構造)に依存していることが分かった。東北日本では従来考えられているよりもH20が深く、150-200kmまで沈み込み、その後上昇してマグマを精製しているらしいことが明らかになってきた。東北日本が地球上で最も冷たいプレートの沈み込む場所であることを考えると、ほとんどの沈み込み帯では、沈み込んだH20、深さ200:km以浅で再び地表に還元され、火成活動を引き起こしていると考えられる。 沈み込み帯の変成作用については、変成岩及び変成帯の鉱物化学組成と流動組織に記録されている岩石塊の温度-圧力-変形-時間経路を再現する数値モデルの開発が行なわれた。変成作用の温度・圧力条.件については、火成作用のモデルの延長として、海嶺の沈み込みにより、高圧型と高温型の変成帯がほぼ同じ場で短時間(数から数十万年)で形成され得ることをはじめて見出だした。また、様々な流れ・変形モデルをたて、放散虫化石に記録されている有限歪みをモデルと照合した結果、日本列島は、斜め沈み込みに伴う前弧付加ウェッジ内でおこる3次元コーナーながれに伴っで流動/変形/上昇が起こることが明らかにされた。沈み込み帯の熱モデリングと合わせた結果は、そのような流動は、海嶺が沈み込む時に、一時的に熱とH20が前弧領域に供給されて岩石の粘性が低下するときに起こると考えられる。
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