先カンブリア時代の鉱物-水-大気反応:大気進化の推定

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11440160
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 村上 隆 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (00253295)
• 研究分担者: 小暮 敏博 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (50282728)
• キーワード: 大気の進化 / 鉱物-水-大気反応 / 風化 / 電子顕微鏡 / 酸素 / 二酸化炭素

研究概要

現代、先カンブリア時代とも地球表層では、鉱物-水-大気反応は継続的に起こっており、その結果である風化岩石は大気進化の情報を含んでいる。ところが、鉱物学的データが少ないため、先カンブリア時代の大気進化モデルには、鉱物の持っている情報の適用が少ない。従来のバルク試料からの情報に鉱物のミクロ或いはナノメーター領域での情報を加え、先カンブリア時代の鉱物-水-大気反応を解析し、30-20億年前の大気中の二酸化炭素、酸素の濃度(範囲)を明らかにすることを目的とする。
カナダにて3.0-2.0Gaの風化岩石を、風化の程度に応じてそれぞれシリーズで試料採取した。そのうち、Cooper Lake(約2.5Ga前のmafic volcanicsの風化),Pronto(約2.5Ga前のgraniteの風化)からの岩石のバルクでの化学組成変化・鉱物組成変化を誘導結合プラズマ発光分析、X線蛍光分析及びX線回折等を用いて調べた。Cooper Lakeの風化プロファイル中でFe(3+)は一定で、Fe(2+)は風化上部に向かい一定減少し、また、Ceは他の軽希土類元素と類似の挙動をした。これはこの風化が酸素が殆どない環境で起こったことを示している。この時の最大酸素分圧は0.008atmだったと計算された。Prontoでも同様な傾向が観察され、最大酸素分圧は0.01atmで、互いに矛盾しない値となった。

研究成果

• [文献書誌] Murakami,T.,Utsunomiya,S.: "Comparison of biotite dissolution in the laboratory and in the field by high-resolution transmission electron microscopy"Mineralogical Magazine. 62A. 1044-1045 (1998)
• [文献書誌] Murakami,T.,Sato,T.,Inoue,A.: "HRTEM evidence for the process and mechanism of saponite to chlorite conversion reaction through corrensite"American Mineralogist. 84. 1080-1087 (1999)
• [文献書誌] Utsunomiya,S.,Murakami,T.et al.: "A new apparatus for the examination of the effect of partial pressure of carbon dioxide on mineral dissolution"Mineralogical Jorunal. 21. 1-8 (1999)
• [文献書誌] Finch,R.,Murakami,T.: "Systematics and paragenesis of uranium minerals,In : Uranium : Mineralogy,Geochemistry and the Environment"Reviews in Mineralogy. 38. 91-179 (1999)
• [文献書誌] Ohnuki,T.et al.: "Sorption behavior of europium during alteration of albite"Radiochimica Acta. 86. 161-165 (1999)