研究概要 |
地球表層における鉱物-水-大気反応は、その結果として、風化した岩石に大気進化の情報を含んでいる。この相互作用は現代、先カンブリア時代とも継続的に起こっているが、大気組成の差ににより、風化岩石には鉱物学的・化学的に異なる二次鉱物を形成されるはずである。ところが先カンブリア時代の風化岩石は、風化後例外なく変質作用を受けているため、実際の鉱物-水-大気反応の情報が消されており、その再現・推定は困難になっている。従来のバルク試料からの情報に鉱物のミクロ或いはナノメーター領域での情報を加え、先カンブリア時代の鉱物-水-大気反応を解析し、30-20億年前の大気中の二酸化炭素、酸素の濃度(範囲)を明らかにすることを目的とする。 一昨年度、カナダ、プロント地方の25億年前に風化を受けた花崗岩から、Ce(3+)を多く含むrhabdophaneを発見した。この鉱物は酸化的な雰囲気下ではCeを含まない。バルク分析とも合わせて、溶液中でCe(3+)がLa(3+), Nd(3+)と同様の挙動をしたことがわかり、25億年前に風化は非酸化的な雰囲気下で起こったと結論した。本年度は同地方のchloriteの微細構造の変化を高分解能電子顕微鏡で風化帯全域にわたって調べた。その結果、原岩では純粋のchloriteであったものが、徐々にbiotiteを一単位層で含み始め、その量は風化帯上部に向かうに従い、多くなることがわかった。別途行った低酸素下でのbiotiteの風化実験からFe, Mgの含有量に依存せず、二次鉱物としてvermiculiteが一単位層毎にbiotite中に形成すること(風化ではchloriteもbiotiteと同じ二次鉱物を同じ形式で形成することがわかっている)、また、vermiculiteの熱水実験から、風化帯の埋没後、vermiculiteはbiotiteに変換すること、がわかった。従って、プロント地方のchloriteのbiotite化は、風化前にすでにchloriteが存在し、風化により、その一部がvermiculite化し、風化帯の埋没後、続成作用あるいは弱い熱水変質作用により、そのvermiculiteがbiotite化した結果を現在観察しているという結論を得た。これは、先カンブリア時代の鉱物-水-大気反応とその後の変質化を再現したことになり、大気の進化の解明に大きな貢献を果たした。
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