下部マントルにおけるスラブ構成鉱物の高圧相転移と熱力学的性質

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11440162
• 研究機関: 学習院大学
• 研究代表者: 赤荻 正樹 学習院大学, 理学部, 教授 (30126560)
• 研究分担者: 糀谷 浩 学習院大学, 理学部, 助手 (60291522) ; 鈴木 敏弘 学習院大学, 理学部, 助手 (40235974)
• キーワード: スラブ / 下部マントル / 高圧相転移 / 熱量測定 / イルメナイト / プロブスカイト / ガーネット / 玄武岩

研究概要

上部マントルから下部マントルへ沈み込むスラブのパイロライト層および玄武岩質層を構成する鉱物の相転移を高温高圧実験によって明らかにし、高圧相の熱量測定を行って、熱力学データから相平衡関係を計算した。今年度の主要な成果は以下の通りである。
1.Mg_4Si_4O_<12>-Mg_3Al_2Si_3O_<12>系イルメナイト固溶体のエンタルピーを測定し、ガーネット-イルメナイト-ペロブスカイト転移の転移エンタルピーを求めた。このデータを使って計算された相境界線は温度の低下によってイルメナイトの安定領域が拡大することを示した。この結果は高温高圧実験による相平衡図とよく調和している。このことから、沈み込むスラブ内ではガーネット-イルメナイト転移とイルメナイト-ペロブスカイト転移が起こること、また平均的な温度のマントルではガーネットがペロブスカイトに直接転移することが示された。
2.CaSiO_3ペロブスカイトは常圧に戻すとアモルファス化する。しかしCaSiO_3-CaGeO_3系では約30%までCaSiO_3成分を固溶したペロブスカイト固溶体が常圧に回収されることを見出した。この系のペロブスカイト固溶体のエンタルピーを測定してCaSiO_3ペロブスカイトの転移エンタルピーを推定し、CaSiO_3やCaMgSi_2O_6の相平衡関係を計算した。
3.CaAl_2O_4-NaAlSiO_4系とMgAl_2O_4-KAlSiO_4系の約30GPaまでの相関係を明らかにし、後者では15GPa以上で六方晶系高圧相が安定であることを見出した。この相は、先に研究代表者らがMgAl_2O_4-CaAl_2O_4系で見出し構造解析が行われた六方晶相と同じ結晶構造をもつ。玄武岩質層の沈み込みに伴って、この相が下部マントルでアルカリ元素のホスト相になると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Atake, T.: "Low temperature heat capacity of high-pressure phase of SiO_2, coesite, and calculation of the α-qiuartz-coesite equilibrium boundary"J. Chum. Thermodyn.. 32. 217-227 (2000)
• [文献書誌] Kubo, A.: "Compressibility of Mg_<0.9>Al_<0.2>Si_<0.9>O_3 perovskite"Proc. Japan Acad.. 76. 103-107 (2000)
• [文献書誌] Kojitani, H.: "Calorimetric study of perovskite solid solutions in the CaSiO_3-CaGeO_3 system"Phys. Chem. Minerals. 28. 413-420 (2001)
• [文献書誌] Reynard, B.: "Raman spectra of ilmenite phases on the MgSiO_3-Mg_3Al_2Si_3O_<12> join"Eur. J. Mineral.. (in press). (2002)
• [文献書誌] Akaogi, M.: "High-pressure transformations in NaAlSiO_4 and thermodynamic properties of jadeite, nepheline, and calcium ferrite-type phase"Phys. Earth Planet. Inter.. (in press). (2002)
• [文献書誌] 糀谷浩: "アルミニウムを含む下部マントル物質の鉱物化学"高圧力の科学と技術. (印刷中). (2002)
• [文献書誌] 赤荻正樹: "新しい高圧力の科学(毛利信男編)"講談社サイエンティフィク(印刷中). (2002)