研究概要 |
初年度のため基礎研究として、1)自然物質中に存在するペプチド中でも一番単純なジペプチド分析法の確立、2)紫外線照射よるアミノ酸生成のシミュレーション実験、3)炭素質隕石中の有機物の分析を行った。 ジペプチド分析法の研究では、標準化合物としてL-Asp-L-AlaとL-Val-Glyを用いてメチルエステル化を室温下で3時間行ったところ、それぞれのジペプチドの分解は4%以下と0.1%以下であった。これは、これまでに使用されていた80℃で1時間のエステル化での16%と0.4%に比べる大幅な改良であり、GC/MS分析に適する条件が得られた。 紫外線(172nm)照射実験では、アンモニアと水が存在すれば、炭素源としてグラファイトを使用することで、アミノ酸の生成が認められた。これらのアミノ酸はグリシンからロイシンまでのタンパク性と非タンパク性の両方のアミノ酸を含むことが判明した。隕石母天体上にはグラファイトが存在するので、アンモニアと水の存在下でこれらの単純な化合物からアミノ酸が生成し、その縮重合反応によりジペプチドやポリペプチドの生成が起きる可能性を指摘した。 炭素質隕石として日本の南極観測隊が採集したアスカ隕石、A-881280,A-881334,A-881458の3個の隕石を、それらの有機物としてモノカルボン酸を分析した。その結果、A-881458隕石から約30個のモノカルボン酸を検出した。これにより、A-881458隕石は本研究目的のペプチド化合物の検出に利用できることが判明した。
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