炭素質隕石中のペプチド化合物の検出とその生成プロセスの検証

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11440166
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 下山 晃 筑波大学, 化学系, 教授 (30134084)
• 研究分担者: 三田 肇 筑波大学, 化学系, 助手 (00282301)
• キーワード: ジペプチド分析法 / GC / MS分析 / 隕石有機物 / マーチソン隕石 / チオフェン類 / アスカ隕石 / 芳香族炭化水素 / 炭素同位体比

研究概要

次年度では、初年度に確立したGC/MS分析法による堆積岩中のジペプチド分析法をまとめ論文を作成した(Org.Geochem, 15, 57, 2000)。一方、この光学分割を取り入れた分析法を利用し、アミノ酸の加熱実験によるジペプチド、トリペプチド生成のシミュレーション実験を行った。その結果、L-体のみのアラニンを加熱しても、LL-体のジアラニンだけでなく、LD-体、DL-体のものも生成し、わずかではあるがDD-体のものも生成することが判明した。
炭素質隕石中のジペプチド分析を行った結果、グリシルグリシンのみが極く微量で検出された。しかし、極微量であること、およびグリシンには光学異性体がないこと、から汚染物の混入にによる可能性が高く、その確認について現在再分析中である。炭素質隕石中の他の有機物についての研究では、マーチソン隕石中に存在する微量なチオフェン類を同定・定量し、隕石有機物としての特徴を明らかにした(Chem.Lett.,in press)。さらに、日本の南極観測隊が採集したアスカ隕石、A-881458中の芳香族炭化水素の個別分子について炭素同位体比を分析した。その結果、これらの芳香族炭化水素の生成は熱力学的な要因よりは、反応速度支配によることが判明した(Earth Plant.Sci.Lett.,in press)。
上記の他に、隕石有機物分析に応用できる堆積岩有機物の研究として、新第三系新庄堆積岩中の各種多環芳香族炭化水素の(特に続成変化に関する)研究、K/T境界堆積岩中のチオフェン類についての(特に、堆積環境との関連)研究を行い、発表した(裏面の発表論文参照)。

研究成果

• [文献書誌] S.Nomoto,M.Hagiwara,Y.Nakano,and A.Shimoyama: "A New Parameter for Maturity Determination of Organic Matter in Sediments Based on the Clay-catalyzed Thermal Isomerization of Monomethylphenanthrenes"Bull.Chem.Soc.Jpn.. 73. 1437-1443 (2000)
• [文献書誌] H.Mita,T.Nakano,and A.Shimoyama: "Analyses of Amino Acids and Benzene Extracts in the Condensed Water Collected from Inside of the MIR Space Station."Chem.Lett.. 2000. 1042-1043 (2000)
• [文献書誌] R.Ogasawara,H.Mita,R.Ishiwatari,and A.Shimoyama: "Analysis of water-extractable dipeptides from sediments by gas chromatographymass spectrometry."Res.Org.Geochem.. 15. 57-61 (2000)
• [文献書誌] A.Shimoyama,M.Hagiwara,and S.Nomoto: "Naphthalenes in Neogene sediments of the Shinjo basin, Japan."Geochem.J.. 34. 333-340 (2000)
• [文献書誌] H.Katsumata and A.Shimoyama: "Alkyl and polynuclear aromatic thiophenes in Neogene sediments of the Shinjo basin, Japan."Geochem.J.. 35. 37-48 (2001)
• [文献書誌] H.Katsumata and A.Shimoyama: "Thiophenes in the Cretaceous/Tertiary boundary sediments as Kawaruppu, Hokkaido, Japan."Geochem.J.. 35. 67-76 (2001)