研究概要 |
最終年度では、次年度に確立したGC/MS分析法による現世堆積物中のジペプチド34種類の検出結果(Geochem. J., 35, 439-450,2001)を基にして、炭素質隕石中のジペプチドとジケトピペラジンを分析し、世界で初めて隕石中にジペプチドが存在することを明らかにした(Origins Life Evol. Biosphere, 2002, in press)。ジペプチド検出に使用した隕石は、マーチソン隕石とY-781198隕石である。どちらの隕石中にもアミノ酸が比較的多く含まれていることが知られ、本研究目的には最適な隕石試料である。その結果、極めて微量ではあるがマーチソン隕石には、ジペプチドとしてのグリシルグリシンが4pmol/g、ジケトピペラジンとしてのグリシルグリシンが23pmol/g、また、Y-781198隕石には、ジペプチドとしてのグリシルグリシンが11pmol/g、ジケトピペラジンとしてのグリシルグリシンが18pmol/g存在することを見いだした。さらに、アミノ酸分析ではマーチソン隕石に300nmol/g、Y-781198隕石に700nmol/g存在することを明らかにした。2量体としてのグリシン存在量とモノマーとしてのグリシン存在量から、ジペプチドとしてのグリシルグリシンがグリシンの脱水縮合反応により生成したことを提案した。 さらに、隕石有機物として存在量の多い尿素とカルボン酸の加熱反応でポリアミノ酸生成についての研究を行い、また、堆積岩有機物の研究として、新第三系新庄堆積岩やK/T境界堆積岩中のシクロアルカンやマレイミドの研究、発表した(裏面の発表論文参照)。
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