コンドライト隕石の元素組成は太陽系の元素組成に類似することが知られているが、揮発性元素では必ずしもその関係は成り立たない。そこで、揮発性元素としてハロゲン元素を選び、コンドライト隕石中における存在度と分布を求めた。分析法に中性子放射化分析法と光量子放射化分析法を用い、塩素、臭素、ヨウ素の定量を行った。その結果、コンドライトの岩石学的分類とハロゲン元素、特にヨウ素の含有量には相関があることがわかった。また、3ハロゲン元素のコンドライト隕石中における分布を求めたところ、ヨウ素の分布が塩素、臭素とは異なることが分かった。従来、ヨウ素は揮発性の高い元素に属するものと考えられてきたが、コンドライト隕石中では、いわゆる高温鉱物にかなり分布していることが分かった。もしこの分布が2次的な元素の移動(拡散)によるものでないとすると、この結果は原始太陽系における環境下ではヨウ素の揮発性が高くなかったということを示すものであり、これまでの考えを変更せざるを得ない。また、岩石学的分類との相関は、隕石母天体の集積時に生じたものと解釈できるので、分別集積が起こったことを示唆するものである。以上の研究と並行して、コンドライト中のリンの定量を行った。リンはコンドライト中ではリン酸塩鉱物を構成する元素であるが、太陽系初期の元素の凝縮過程では恐らく親鉄元素として金属相と固溶体を形成しながら、気相から固相に移動したと予想されている。コンドライト隕石のリンの含有量が、岩石学的分類に相関するかどうかを確かめるために、リンの系統的な分析を行った。分析にはICP原子発光分析法を用いた。共存元素によって定量値の精度に差が生じることが分かり、まず分析法を確立し、その後、各種コンドライト隕石中のリンの分析を系統的に実施した。
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