研究概要 |
1.前年度までに海洋大気中(60°S-50°N)における^7Be・^<10>Be濃度が共にほぼ南北対称で20-30°で極大値を示すことが明らかになり、同時に同位体比^<10>Be/^7Beが一定でなく季節変動を示すことが判明した。この原因が、^<10>Be/^7Beが高い成層圏と^<10>Be/^7Beが低い対流圏の間の大気交換速度の変動によるものと推定した。これに対し今年度は、大気中における^7Be・^<10>Beの生成速度について、陽子(1次+2次宇宙線)、中性子(2次宇宙線)の大気深さ毎のスペクトル(計算値)、および^<14>N・^<16>Oを標的とする核反応断面積(主として実測値)を用いて高度分布を求め、Lalらのモデルを適用し、緯度毎の高度分布を算出した。この高度分布を用い、^7Be,^<10>Beの生成速度は成層圏において0.041,0.018、対流圏において0.027,0.018(atoms cm^<-2>s^<-1>)と算出された。さらに成層圏と対流圏の間の大気交換速度およびその期間をパラメーターとしてボックスモデルによる計算を行い、1年間のうち0.4年間が交換速度5倍という条件で、観察された^<10>Be/^7Beの季節変動が説明できるという結果が得られた。 2.海洋表層水における^7Be・^<10>Be濃度の深度分布測定から(主にインド洋)、混合層において^7Be/^<10>Beは一定であることが判明した。この値と海洋大気中の^7Be/^<10>Beからボックスモデルを適用することにより、混合層における^7Be・^<10>Beの平均滞留時間が求められ、さらに混合層の^7Be・^<10>Be濃度から、^7Be・^<10>Beの大気から海洋へのフラックスが算出された。この算出法においては、変動の激しい大気中の^7Be・^<10>Be濃度ではなく同位体比を用いているため、精度良くフラックスを求めることが可能となった。
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