研究概要 |
昨年度は,時間領域における化学反応の量子制御を実現させる為に,特定の化学反応の進行に適したパルス形状を探索・発生させる進化型最適化フィードバック制御をかけた波形成形システムを作製した。今年度は,(1)昨年度作製した波形成形システムの改良,(2)改良したシステムを用いたペリレン結晶の自己束縛励起子生成の制御を試みた。 (1)波形成形システムの改良 初年度に作製した進化型制御システムは,単純交叉と単純世代交代を組み合わせた初歩的な遺伝的アルゴリズムを用いてフィードバック制御を行っていた為,解(目的に適したパルス波形)を探し当てるまでに掛かる時間(収束時間)も長く,またそこで得られたパルス波形も十分なものではなかった。そこで収束時間の短縮と得られる解の改善を目的として様々な制御方式を検討した結果,解の改善にはBLX-α方式による子孫生成とMGG方式による世代交代を組み合わせた方式が有効であること,収束時間の短縮には"間引き"操作(進化操作の対称とする液晶ピクセルを等間隔で選び出し,その間のピクセルの状態は適当な内挿(直線補間,スプライン補間等)により決める)が有効であることを見出した。両者を組み合わせた制御方式により収束時間は半分以下で得られる波形も十分な改善が得られた。 (2)ペリレン結晶の自己束縛励起子生成の制御 上述したシステムによりペリレン結晶の自己束縛励起子(STE)生成の制御を試みた。ペリレン結晶は400nmの光で励起することで,室温付近では600nm付近にE発光と呼ばれるSTE(E-STE)由来の発光を示し,低温(<60K)では500nm付近にY発光と呼ばれる別のSTE(Y-STE)由来の発光を示す。温度制御したペリレン結晶を波形成形したフェムト秒パルスで励起し,500nmと600nmの発光強度比を指定した割合になるようなパルス波形の探索を行った。その結果,発光強度比を有意に変化させることが出来ることを見出した。
|