平成12年度は、平成11年度に展開した理論をさらに発展させると共に、開発したプログラムをより現実的なモデル溶液化学反応系やタンパク質内反応系などを対象に適用した。 (1)フォッカー・プランク方程式による反応エネルギー移動解析:平成12年度は、平成11年度に実施したランジュバン方程式による解析と本質的に等価なフォッカー・プランク方程式に基づいた非平衡系の取り扱いを展開した。まず適当な初期分布を仮定して現実的時間スケールの間、本方程式を解くことを可能とするコンピュータ・アルゴリズムを開発した。さらにそのアルゴリズムを利用して二次元化を検討し、フォッカー・プランク方程式を利用した反応分子内熱浴モードの性質と役割の解明を実行した。 (2)溶液内有機反応系とタンパク質内反応系におけるエネルギー移動の解明:研究目的欄に述べたように本基盤研究(B)の最終目標は、近年観測され始めてきたJ.M.Jeanらや田隅らによるS_<1.>trans-スチルベンの分子内振動エネルギー移動、寺嶋らによるレーザー光で誘起される溶液内での発熱現象、それに北川らにより明らかにされた生体分子内反応での非熱平衡分布が、いかに成立するか(成立機構)、またその非平衡性の時空構造は理論的にはどう表現され理解すべきかを解明することである。本年度はこれらの現実問題を化学的普遍性を損なうことなく理論家の立場からアプローチした。 年度最後に本研究で展開された、凝縮系における反応エネルギー移動における非平衡非平衡過程の理論的知見を、その化学的・物理学的側面の二面からまとめ、以下の11に記載した学術誌に発表した。また最終的な報告を適当な学会において発表した。
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