2001 年度実績報告書

芳香族クラスターイオンにおける水素結合及び電荷共鳴相互作用の分光学的研究

研究課題

研究課題/領域番号	11440177
研究機関	九州大学
研究代表者	関谷博九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90154658)
研究分担者	大橋和彦九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (80213825)
キーワード	クラスター / 水素結合 / 超音速ジェット / イオン / 分子間水素結合 / 電荷共鳴 / プロトン移動 / 分子軌道計算
研究概要	4-アミノベンゾニトリル-水1:1クラスターの電子スペクトルと赤外デイップスペクトルの測定を行い、水素結合相互作用について調査した。アミノ基の水素原子に水の酸素原子が水素結合している"NH_2構造"、シアノ基の側面に水が結合している"CNサイド構造"の他に、シアノ基のN原子に水の水素原子が直線的に結合する"CN直線構造"を初めて観測した。ベンゾニトリル-水クラスターでは、"CNサイド構造"は観測されるが、"CN直線構造"は観測されない。また、アニリン-水クラスターにおいては"NH_2構造"は観測されない。これらの結果は、置換基の導入が水素結合とクラスターの安定構造に大きな影響を及ぼすことを明確に示した。更に、"NH_2構造"のパルス電場イオン化ZEKE光電子スペクトルの観測に成功した。中性状態と同様にカチオン状態においも水の酸素原子とアミノ基の水素原子が分子間水素結合していることが示された。また、プロトンが付加したトリメチルアミンクラスターの振動スペクトルの測定と分子軌道計算を行い、クラスター内でプロトンがどのように結合しているかについて調査した。プロトンが付加したトリメチルアミン2量体の振動スペクトルには、アミノ基の伸縮振動が強く観測されるが、メチル基のCH伸縮振動は極めて弱い。しかし、プロトンが付加したトリメチルアミン4量体のスペクトルにはCH伸縮振動が強く観測される。2量体において、プロトンはトリメチルアミンの2個の窒素原子の中間に存在し、水素結合座標に沿ったポテンシャル障壁がゼロ点振動エネルギーよりも低いことが示唆された。一方、四量体においては、イオン核にプロトンが局在しており、その周りに3個の溶媒分子が結合していると考えられる。以上の様に、本研究から、クラスターカチオンの水素結合相互作用について新規な情報が得られた。

研究成果
(6件)

すべてその他

すべて文献書誌 (6件)

[文献書誌] Norifumi Yamamoto et al.: "Density functional studies on aniline dimer cations"Chemical Physics Letters. 345. 532-538 (2001)
[文献書誌] Norifumi Yamamoto et al.: "Hole-burning spectroscopy and ab intio calculations for the aniline dimer"Chemical Physics Letters. 342. 417-424 (2001)
[文献書誌] Kenji Sakota et al.: "Electronic and infrared spectra of jet-cooled 4-arninobenzonitrile-H_2O. Change of NH2 from proton acceptor to proton donor by CN substitution"Chemical Physics Letters. 341. 70-76 (2001)
[文献書誌] Kunihiko Iwahashi et al.: "Hole-burning spectra of tropolone-(CO_2)_n(n=1,2)van der Waals complexes and density functional study"Chemical Physics. 270. 333-343 (2001)
[文献書誌] Yukio Nishimura et al.: "Theoretical study on 5-phenyltropolone in the S_0 and S_1 states"The Journal of Physical Chemistry. 105. 7273-7280 (2001)
[文献書誌] Hirotoshi Mori et al.: "Structure and intermolecular hydrogen bond of jet-cooled p-aminophenol-(H2O)1 studied by electronic and IR-dip spectroscopy and density functional theory calculations"Chemical Physics. 277. (2002)

2001 年度 実績報告書

芳香族クラスターイオンにおける水素結合及び電荷共鳴相互作用の分光学的研究

研究代表者

関谷 博 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90154658)

研究成果

[文献書誌] Norifumi Yamamoto et al.: "Density functional studies on aniline dimer cations"Chemical Physics Letters. 345. 532-538 (2001)

[文献書誌] Norifumi Yamamoto et al.: "Hole-burning spectroscopy and ab intio calculations for the aniline dimer"Chemical Physics Letters. 342. 417-424 (2001)

[文献書誌] Kenji Sakota et al.: "Electronic and infrared spectra of jet-cooled 4-arninobenzonitrile-H_2O. Change of NH2 from proton acceptor to proton donor by CN substitution"Chemical Physics Letters. 341. 70-76 (2001)

[文献書誌] Kunihiko Iwahashi et al.: "Hole-burning spectra of tropolone-(CO_2)_n(n=1,2)van der Waals complexes and density functional study"Chemical Physics. 270. 333-343 (2001)

[文献書誌] Yukio Nishimura et al.: "Theoretical study on 5-phenyltropolone in the S_0 and S_1 states"The Journal of Physical Chemistry. 105. 7273-7280 (2001)

[文献書誌] Hirotoshi Mori et al.: "Structure and intermolecular hydrogen bond of jet-cooled p-aminophenol-(H2O)1 studied by electronic and IR-dip spectroscopy and density functional theory calculations"Chemical Physics. 277. (2002)

2001 年度実績報告書

関谷博九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90154658)