前年度に引き続き多価イオンと直線分子CO_2、CS_2、非直線分子NO_2、5原子分子CD_4の衝突によるクーロン爆発イメージング実験を行い、これらの分子像の直接観察を試みた。入射イオンの価数や衝突エネルギーを変化させてイメージングを行い、いずれも既知の値と矛盾の無い結合角を得た。またクーロン爆発による解離断片の運動エネルギーを求め、クーロン爆発モデル、多価イオン電子状態のMO計算との比較を行ったところ、実測値は両者の間に位置することがわかった。以上の結果は内外の学会で報告するとともに一部論文として専門誌に発表した。ごく最近の成果ではCElを利用して、O点振動による対称性の低下の結果生じたCD_4の鏡像体(動的なキラリティー)の識別に成功し、気相に孤立した分子の鏡像体識別が原理的に可能なことを示した。この結果は現在投稿準備中である。 実験装置に関しては、検出効率の改善のために有感部直径120mmの大型位置敏感検出器を開発した。120mmMCPと組み合わせた検出器の分解能、画像ひずみの解析を行い良好な結果を得た。この検出器については次年度に専門誌で企画されている特集号において発表予定である。また解析アルゴリズムについても大きな変更を加えた。その結果多重コインシデンスイベントの検出漏れを大幅に減少させるとともに、時間分解能2nSを達成した。これは現在使用しているオシロスコープの限界であり、今年度末に納入される高速機によってさらに高い時間分解能が得られると期待される。
|