研究概要 |
ポリパラフェニレンビニレン(PPV)誘導体(4種類)を材料とした単層型発光ダイオードを製作し,in situ赤外反射的吸収分光法を用いて,PPVの配向,電圧印加により注入されるキャリヤー,共役高分子の劣化に関して研究した.ITOを蒸着したBaF_2(赤外光を透過する電極)の上に,スピンコーティング法により,膜厚約100nmのPPV誘導体薄膜を作成した.その上に,電極として金属(Al-Li合金,Mg-Ag合金)を蒸着して,発光ダイオードを製作した.製作した発光ダイオードの電界発光スペクトルは,蛍光スペクトルと一致したので,発光は1重項励起子からの発光といえる.電場誘起赤外吸収には,キャリヤーに起因するバンドが観測された.p型ドーピング,n型ドーピング,光照射で生成するキャリヤーのスペクトルと比較すると,DOO-PPVとMEH-PPV発光ダイオードの電圧誘起スペクトルは,p型ドーピングしたポリマーのスペクトルと類似していた.このことは,電圧印加により正キャリヤー(正ポーラロン)の注入量が負キャリヤー(負ポーラロン)の注入量よりもかなり多く,高分子層にトラップされた正ポーラロンが観測されたと解釈できる.これらの発光ダイオードではキャリヤーバランスが悪く,発光効率も悪い.これらの発光特性が電圧誘起赤外スペクトルに反映されているといえる.また,DMOOP-PPVとその共重合体の発光ダイオードはキャリヤーバランスが良く,発光効率が高い.これらの発光ダイオードの電圧誘起赤外スペクトルには,正キャリヤーに帰属できるバンドの他に,負キャリヤーのバンドと思われるバンドが観測されている.これらの発光ダイオードでは,キャリヤーバランスが良いために,負キャリヤーも観測されたと考えられる.
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