研究概要 |
1.2,2-ジメチルチオフェニル-(メチルスルフェニル)フェニルテルリド及び2,6-ジメチルチオフェニル-4'(4"-メチルスルフェニル)フェニルテルリドを合成し無水トリフロロ酢酸(CF_3SO_2)_2OをCH_3CN中で反応させると、メチルスルフェニル基は還元され、テルリドのテルル原子が酸化され、2,6-位のフェニルチオメチル基が配位子となるテルランが生成した。このテルランは単離してX-線結晶解析と^1H,^<13>C,^<125>TeのNMRで構造を決定した。反応はまずCF_3SO_2基がテルリドの中心テルル原子より遠隔位にあるスルフィニル酸素と反応してスルホキソニウム塩を生成し、2,6-位のフェニルチオメチル基の硫黄原子より電子がテルル→フェニル環を流れて末端のスルフィニル基をスルフェニル基に還元する遠隔酸化-還元反応であることを明らかにした。この遠隔反応はπ電子系がp-位で接続している時は遠方まで伸びるが、2ヶのベンゼン環をメチル鎖でブロックすると全く起こらないことが判った。この遠隔酸化反応は信号の伝達がp電子系を通して進むことを明らかにした初めての例であり、分子スイッチや電子伝達のメディエータ系を構築できると考えられる。 2.同じ反応をm-置換体で行うと遠隔反応によるテルランの生成は認められず複雑な生成物となった。 3.2-メチルチオメチルフェニル-アルキルカルコゲニドの一電子酸化又はモノオキシドとトリフロロ無水酢酸の反応によりカルコゲン原子間の相互作用を経てカルコゲナジカチオンを生成し、アルキルカチオンが発生する反応を見出した。この反応による炭素カチオン発生する新規な反応を見出した。この反応による炭素カチオン発生の速さは、アルキル基の付くカルコゲン原子(R-X-,X=S,Se,Te)では、S>Se>Teの順となり、ジチアジカチオンが最も反応性が大きい。この安定性の順序はRHF/3-21G^<(*)>による分子軌道計算の結果、カルコゲン原子上の負荷電の小さいもの程カチオンを出しやすい結果となり実験を支持している。
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