不斉なスピロ中心を持つビスイソキサゾリン配位子(SPRIXs)をデザインし、不斉配位子としての機能を精査した。マロン酸エステルを、短工程で、ジオキシム体へ変換し、分子内ダブルニトリルオキシド環化付加反応により、種々の置換基を持つSPRIXsを容易に合成することが出来た。SPRIXsは不斉配位子としての機能が未知の化合物であるため、可能な3種のジアステレオマーは、すべてラセミ体として合成し、光学異性体分離カラムを備えた高速液体クロマトグラフを用いて分取した。得られたSPRIXsの相対配置は、X線結晶構造解析により決定した。これまでイソキサゾリン化合物の配位能については報告されていないため、まずSPRIXsと種々の金属との親和性や、金属錯体としての安定性について検討した。その結果、SPRIXsがCu、Co、Ni、Pdなど多くの金属と比較的安定な錯体を形成することがわかった。Cu錯体や、Pd錯体については、結晶として単離することにも成功している。また、Cu-SPRIX錯体のX線結晶構造解析により絶対配置を決定できた。次に、SPRIXsの不斉触媒としての機能を既存の触媒系に適用することで比較した。現在までに、Cu-SPRIX錯体を用いるジアルキル亜鉛によるマイケル反応と、Wacker型化反応が比較的効率良く推進することを見いだしている。特にWacker型反応では、タンデムに反応が進行した新規化合物を最高83%eeで得ることに成功した。本化合物を光学活性体として与える配位子は他には見られておらず、SPRIXの有用性を確認することが出来た。
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