ポラン・ルイス塩基付加物を用いるメタルリッチーメタラボランクラスター合成法の確立

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11440193
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 下井 守 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30092240)
• 研究分担者: 河野 泰朗 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (10262099)
• キーワード: メタラボラン / クラスター化合物 / ルテナボチン

研究概要

BH_3・THFと〔Cp^*RuCl〕_4との反応ではニドラクスの新しいジルテナペンタボランクラスター[{Cp^*Ru(μ-H)}_2B_3H_7](1)を与えた。化合物1はペンタボラン(9)のアピカル位および底面の1頂点のBHをアイソローバルなCp^*RuHフラグメントで置換したものに対応する。1はさらにBH_3・THFと反応してメタラボラン骨格が拡張してnido-[(Cp^*Ru)_2(μ-H)B_4H_9](2)を生成する。化合物2はヘキサボラン(10)の1位および2位をルテニウムフラグメントで置換したものに相当する。
化合物1を2等量のPMe_3またはPMe_2Phと反応させたところ、クラスター解裂反応を起こし、[(Cp^*Ru)_2(μ-H)(B_2H_5)(PR_3)](3a:PR_3=PMe_3,3b:PR_3=PMe_2Ph)が良好な収率で得られた。この化合物の二つのCp^*Ruフラグメントはヒドリドにより架橋されており、一つのRu(2)にはPR_3が配位している。B_2H_5グループは前例のないμ-η^4-配位形式で金属間を架橋している。3bを60℃に加熱すると[(Cp^*Ru)_2(μ-PMe_2)(B_2H_5)](4)が生成する。化合物4はRu_2B_2骨格が四面体を形成しており、B_2H_5フラグメントはBH_3-H-BH骨格をもち、3のB_2H_5フラグメントとは全く異なる。BH_3部の二つの水素はRu-H-B架橋を作っている。また4はNMRのタイムスケールでフラクショナルな挙動を示し、BH_3-H-BH←→BH-H-BH_3の変換とホスフィド配位子の配向が変化することにより、非等価なホスフィドのメチル基が高温では等価になる。化合物1、3a、4については結晶解析により構造を決定した。
以上Ru_2B_3を出発物質として、クラスター骨格拡大と縮小反応によりRu_2B_2,Ru_2B_4骨格を有する新しいメタルリッチメタラボランクラスターの開発に成功した。

研究成果

• [文献書誌] Y.Kawano,H.Matsumoto,M.Shimoi: "Syntheses of Diruthenaborane Clusters,[{Cp*Ru(μ-H)}_2B_3H_2],[{Cp*Ru)_2(μ-H)}B_4H_9],and [(Cp*Ru)_2(μ-H)(PMe_3)(μ-η^4-B_2H_5)]"Chem.Lett.. ・6. 489-490 (1999)
• [文献書誌] T.Kakizawa,Y.Kawano,M.Shimoi: "H-D Exchange Reaction of Borane-Lewis Base Adducts by Rhenium Polyhydride Complexes"Chem.Lett.. ・8. 869-870 (1999)
• [文献書誌] M.Shimoi,S.Nagai,et.al.: "Coordination Compounds of Monoborane-Lewis Base Adducts : Syntheses and Structures of [M(CO)_5(η'-BH_3・L)]"J.Am.Chem.Soc.. 121,50. 11704-11712 (1999)
• [文献書誌] Y.Kawano,T.Yasue,M.Shimoi: "BH Bond Activation of Trimethylphosphineborane by Transition Metal Complexes"J.Am.Chem.Soc.. 121,50. 11745-11750 (1199)
• [文献書誌] T.Yasue,Y.Kawano,M.Shimoi: "Syntheses and Structures of Trimethylphosphine-Complexesed Primary Boryl Complexes of Group 8 Metals,Cp*M(CO)_2(BH_2・PMe_3)"Chem.Lett.. ・1. 58-59 (2000)