研究概要 |
[Cp^*RuCl]_4とBH_3・THFとの反応により生じるnido-[(Cp^*Ru)_2(μ-H)(B_3H_7)]とホスフィン類との反応はホスフィンの塩基性により反応経路,生成物が異なることが明確になった.すなわち,塩基性の弱い亜リン酸トリメチル,亜リン酸トリフェニルではP-O結合の切断を伴い,骨格の構造変化を伴うがRu_2B_3骨格を維持したクラスター(1)を生成するのに対して,強いアルキルホスフィン,アリールホスフィンPR_3では骨格の壊変を伴いRu_2B_2骨格のクラスター(2)を生成する.すなわち,ホスフィンの種類によりM/B比をコントロールできることを示した.化合物2は加熱によりさらに変化するが,フェニル基を含む場合にはベンゼンが抜け[(Cp^*Ru)(PR_2)(B_2H_5)](3)を生成する.3は室温で骨格の大きな反転を伴うフラクショナルな性質を示すことがNMRにより判明した. 嵩高い置換基C_6Me_6を含む[(C_6Me_6)RuCl_2]_2とBH_3・THFとの反応により,金属部位が1つしか入らない[(C_6Me_6)RuB_4H_<10>](4)が生成することを昨年明らかにしたが,この化合物の結晶解析により開いたarachnoクラスの構造,すなわち五角錐の底辺の頂点を一つ取り除いた構造を持つこと,Ruは頂点部位に存在することが明らかになった.この構造はarachno-B_5H_<11>の構造に極めて類似している.PMe_3との反応ではBH_3・PMe_3がはずれて,arachno-[(C_6Me_6)Ru(PMe_3)(B_3H_7)](5)を生じる.すなわちホスフィンとの反応によりM/B比を変えることができることがこの例でも示された.化合物5についても結晶解析により構造を確立した.
|