1.ランタン形ロジウム複核錯体とトリエチルケイ素塩化物の反応により、高収率で種々の新規塩素架橋ロジウム四核錯体の合成できることを見出した。これら四核錯体が4つの塩化物イオンで四重に架橋されたロジウム(II)の四核錯体であることならびにその分子構造の詳細をX線構造解析により明らかにした。さらにこの新規四核錯体が溶液中で軸配位子の解離平衡を示すことを、錯体の電子スペクトルに基づいて明らかにした。 2.これらの新しい骨格をもつロジウム四核錯体が水に可溶であること、更に水溶液中でオレフィン類の水素添加触媒能を持つことを明らかにし、その触媒反応の詳細を明らかにした。すなわち、このロジウム四核錯体は、アクリロニトリル、アクリル酸やそのエステル、アリルアルコール、アクリルアミド、アクリルアルデヒド、アリルアミンなどの水溶性オレフィンを常温、常圧の水素雰囲気下において水素添加する均一系触媒として作用することを示し、さらに触媒反応速度の解析に基づいて、触媒錯体の架橋カルボン酸脱離を伴うヒドリド錯体中間体を経て触媒作用を示すとの反応モデルを提唱した。 3.新しい骨格を持つイリジウム(II)複核錯体のカチオンラジカルの電子配置が軸配位子に依存して大きく変わることをESRスペクトルの解析に基づき明らかにした。すなわち、軸配位子が電子供与性に大きなホスフィンやアルシンのとき、この錯体ラジカルの不対電子は金属原子間σ軌道を占めるのに対して、ピリジン軸配位子をもつカチオンラジカルの不対電子軌道は金属原子間δ^*軌道となる。これらの結果を密度汎関数法を用いた量子化学計算と対比し、計算法の信頼度がまだ不十分であることを示した。
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