研究概要 |
第9族元素のクラスター錯体の金属原子上のフロンティア軌道を配位子上に非局在させることならびにフロンティア軌道の形と酸化電位を同時に制御することを目指し,新しい骨格をもつクラスター錯体を合成し,その電子状態の特質を明らかにし、また新しい反応性を発現させることを目的として研究を進めた。 新しく合成されたロジウム四核クラスター錯体が水に対して高い溶解度をもつことに着目し、その水素添加触媒反応を検討し、穏和な条件下、水を溶媒とする新し水素添加触媒反応を見出し、その反応機構を検討した。また、本研究で新しく合成されたプロピオン酸架橋の塩化物イオン二重架橋ロジウム四核クラスター錯体を原料として用いることにより、容易に高収率で中性二座配位性架橋配位子(1,8-ナフチリジンなど)を2つもつ新しいタイプの混合架橋配位ロジウム複核錯体合成が可能であることを見出し、その結晶構造を明らかにし、またその酸化還元電位の配位子依存性を明らかにした。 また、コバルト・ロジウム混合型の三核クラスター錯体を合成し、その酸化還元電位の金属原子位依存性を調べ、これら錯体内のロジウム原子数の増加に伴って酸化電位はより高い電位に、還元電位はより低い電位に変化し、金属原子間結合の最高被占軌道と最低空軌道のエネルギー差の大きくなることが示された。また、コバルト三核錯体の最高被占軌道が、金属原子・アピカル配位子間の結合性をもつ軌道であることが、中性錯体とそのカチオンラジカルの幾何構造変化に基づき示された。
|