研究概要 |
1991年のSr_3CuPtO_6の発見以降、一般式でA'_3ABO_6と表される化合物が数多く合成されてきた。A'サイトにはアルカリ土類金属(Ca,Sr,Ba)が入り、Aサイトには主に3d遷移金属(Fe,Co,Ni,Cu等)、Bサイトには4d,5d遷移金属(Ru,Rh,Ir,Pt等)が占める。磁性原子が占めるAサイトとBサイトに注目してみるとAO_6三角プリズムとBO_6八面体が交互に面を共有してつながり一次元鎖を形成している。このことよりA'_3ABO_6型化合物は一次元磁性体として注目されてきたが、結晶構造をc軸方向からみると、この一次元鎖が三角格子上に配置していることから、二次元三角格子に特有の磁性も期待できる。我々は新しいA'_3ABO_6型化合物の探索を行い、発見した物質に対して低次元磁性の観点から研究を進めてきた。本年度は特に我々が発見したCa_3CuRuO_6、Ca_3CoRhO_6に着目した。 (1)Ca_3CuRuO_6は温度によって異なる構造(低温相と高温相)をもつことをまず見いだした。徐冷によって得られる低温相は六方晶系に属しCuの比が定比の1から大きくずれており、約0.6まで欠損していることがわかった。また1000℃から液体窒素を用い急冷して得られる高温相は広い組成域において単相が得られた。Cuの比が定比に近い相では結晶の対称性が単斜晶であるのに対し、大きくCuが欠損している相では六方晶である。現在、低温相の単相化を行っており、酸素量も含めた正確な組成の決定を目指している。 (2)Ca_3CoRhO_6は約200K以上で常磁性的なCoスピンが低温で磁気秩序を示すが、SQUIDおよび強磁場磁化測定により、この低温での磁気秩序が三角格子に特有のもので、3つの一次元鎖のうち二つが反強磁性的にオーダーし、残りの一つが常磁性的に振る舞ういわゆるパーシャルディスオーダー相であることを示唆する実験結果が得られた。
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