研究概要 |
K_4CdCl_6型構造をもつA'_3ABO_6において,A',A,Bにどのような金属元素が入りうるかを詳細に検討してこの構造の安定性について一般的な法則を明らかにし,様々な一次元磁性体・一次元導体(一次元金属)の探索することを目的に研究を行い以下の結果を得た. Aサイト,BサイトにCoの入ったCa_3Co_2O_6について,物性化学的見地よりその低次元磁性,特にCoのイジングスピンによる特異な磁性について明らかにしてきたが,このBサイトにRhが入った場合も同じ結晶構造で物質が合成でき,B=Coの場合と同様に,イジングスピンの強磁性鎖が作る二次元三角格子反強磁性の振る舞いを示すことが明らかになった.このCa_3CoRhO_6は二つのネール温度T_<N1>(=90K),T_<N2>(=30K)が存在し,T_<N1>とT_<N2>の間の温度では,二次元三角格子反強磁性に特有の部分無秩序相(PDA)状態にあることが中性子回折の結果から明らかになった.部分無秩序相(PDA)において,無秩序状態にある強磁性鎖が容易に反転できないことから強磁性鎖の場合にPDAを取りにくいと考えられてきたが,この系ではまさに強磁性鎖のPDA状態にあることが見出されたわけである.この理由としては,T_<N1>が90Kと非常に高温であることがあげられるが,B=Co系(T_<N1>=24K)と比較して,この高いネール点の原因は現在も不明である.また,強磁性鎖が反転し難いことが原因であると考えられるが,T_<N2>以下の状態は無秩序状態にある鎖がランダムに凍結している状態であることが明らかになった.すなわち,T_<N2>はガラス転移であると考えられ,T_<N2>以下では反強磁性状態の鎖とグラス状態の鎖の共存状態であることになる.その際,強磁場下での磁化測定で凍結を破って磁化が反転する磁場は数十テスラと非常に高いことが明らかになった.今後,更に詳細に研究をおしすすめこの研究を完成し,低次元磁性体について知見を深めたい.
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