研究概要 |
本研究では,K_4CdCl_6型構造をもつA′_3ABO_6において,A′,A,Bにどのような金属元素が入りうるかを詳細に検討し,この構造の安定性について一般的な法則を明らかにして,様々な一次元磁性体を探索し物性を調べることを目的に研究を行い,以下の結果を得た. K_4CdCl_6型構造をもつA′_3ABO_6に化合物として,初めてCa_3CoIrO_6,Ca_3CoRuO_6,Ca_3CoRhO_6の合成に成功した.殊に,B=Rhに当たるCa_3CoRhO_6の場合について詳細に研究を行った結果,B=Coの場合と同様に,イジングスピンの強磁性鎖が作る二次元三角格子反強磁性の振る舞いを示し,二つのネール温度T_<N1>,T_<N2>が存在することが明らかになった.T_<N1>,T_<N2>間の温度領域では,二次元三角格子反強磁性体に特有の部分無秩序相(Partially Disordered Antiferromagnetic Phase)状態にあることが中性子回折の結果から明らかになった.PDA相において,無秩序状態にある強磁性鎖が容易に反転できないことから強磁性鎖の場合にPDAを取りにくいと考えられてきたが,実験的に強磁性鎖でPDA相が観測されたのはこれが初めての例と言える.また,強磁性鎖が反転し難いことが原因であると考えられるが,T_<N2>以下の状態は無秩序状態にある鎖がランダムに凍結した状態となっていることが明らかになった.すなわち,T_<N2>はガラス転移であると考えられ,T_<N2>以下では反強磁性状態の鎖と凍結したグラス状態の鎖の共存状態であることが明らかになった.その際,強磁場下での磁化測定で凍結を破って磁化が反転する磁場は数十テスラと非常に高いことが明らかになった. 今後,更に詳細に研究をおしすすめこの研究を完成し,低次元磁性体について知見を深めたい.
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