界面活性剤は水中で分子同士が一定の規則に基づいて配向し、ミセルや液晶などの分子組織体を形成する。最近研究代表者は、ずり流動場下でポリオキシエチレン系界面活性剤のラメラ液晶相からの中性子小角散乱を測定し、特定のずり速度領域において、液晶ドメインの破壊と再構成に関わる興味深い過程を見出した。その機構を解明するために、本年度は以下の実験を行なった。 1.ずり流動場光散乱観測装置の製作 中性子小角散乱に比べてより広い空間スケールで調べるために、ずり流動場下で光散乱を測定する観測装置の製作を試みた。日本レオロジー(株)製NRM2000を、粘弾性と光散乱の同時測定を行なえるように改造し、2次元検出器として浜松ホトニクス(株)製の冷却CCDカメラを用いた。現在この装置を用いて蒸気のラメラ相の粘度測定を行なっている。光学系部分についてもほぼ完成し、今後性能試験に入る予定である。 2.ずり流動場中性子小角散乱の測定 東海村の東大物性研中性子散乱研究施設SANS-Uにおいて測定を行なった。今回は試料の履歴について調べるために、一定のずり速度を長時間かけ、中性子小角散乱強度の経時変化を調べた。その結果、ドメインの破壊・成長には試料の履歴の影響を受けることがわかった。また内外筒共に石英製のセルを製作し、その粘度特性を調べた。
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